2014年5月24日土曜日

驚異的な運と実力を持つ女優:ヒラリー・スワンク 【ネタばれ注意】!!!

カンヌ映画祭の結果はまだ出ておりませんが、カンヌ関連で頭から離れない女優がいるので時差ぼけついでに書き留めておきます。

彼女の名は、ヒラリー・スワンク。オスカーファンにとっては、無視することのできない女優です。なぜって彼女、今までに2回しかノミネートされていないのに、2回とも主演女優賞を獲っているのです。つまり受賞率100%。2回以上獲ってる俳優で、こんな人ほかにいるのかしら?少なくとも私が生きている時代には居ないはず。

さて、このヒラリーですが、あんまりしょっちゅう映画に出る女優ではありません。そして、受賞率は100%でも、作品のヒット率は一桁なんじゃないかと思うほど、どうでも良い映画にもしばしば出ちゃう女優です。よって、知名度も高くないし人気もない。美人でもない。でもね、まあ映画を見ると、ため息つくほど演技が上手いんだわこれが。

今回のカンヌでは、私の知る限り彼女が出ている映画は2本あり、ひとつは要介護の難病患者役。「最強のふたり」を狙ったんだろうな、と言うような内容の作品の、病人の方の役で、まあこの難病演技が真に迫っていて本当に上手い(らしい)。もうひとつは、精神を病んでしまった3人の女性を目的地まで送り届ける、どちらかと言うと介護をする方の役柄で、しっかりした31歳の独り者の女の役なんだけど、これがもう、地味なんだけどすんげぇ~上手い。こっちの映画はちゃんと見ました。


この作品 THE HOMESMAN は、トミー・リー・ジョーンズ監督で、開拓時代のアメリカ西部が舞台。さまざまな理由で精神を病んでしまった3人の主婦を、療養するために東部に送り届ける話なんだけど、本来男の仕事であるこの仕事を、31歳独身女のヒラリーが買って出る。砂漠を横断して行く途中には、原住民や野獣などに襲われる危険が伴う。でも彼女には守るべき家族もないし、男は頼りにならないしってわけで彼女が立ち向かっていくわけです。

彼女は独り者なんだけど家も土地も家畜も持ってて、料理も上手くて家事も出来る。精神を病んだ主婦達への優しさも人一倍あり、彼女達を治してあげないと、と言う責任感もある。毎日神様にお祈りを捧げ、絵に描いたような模範的な「良い人」。なんだけど、なぜか誰も彼女を娶ろうとしない。まじめで素直な彼女は、近所の独身男性を夕食に誘い、美味しいフライドチキンを作ってごちそうします。彼は喜んで、お礼に自分の作ったチーズを差出し、彼女はそれを喜んで受け取り、二人仲良くそれを食べます。すると彼女は唐突に切り出すのです。「あなたの財産と私の財産を合わせたら、今よりもっと良い暮らしを出来る。私は料理が出来るし、子供も出来ればなおさら良い。結婚しましょうよ。」軽く食事の招待を受けに来ただけの彼は驚いて言う。「君と結婚?あり得ない。君みたいに威張るやつは嫌だし、俺はここでの仕事が一段落ついたら東部に嫁を探しに行って、かわいい嫁を連れて来るんだ。あんたは良い人だけど、結婚なんてしたくないよ。」そして彼は翌日、彼女から夜逃げするかの如く、東部に引き上げて行ってしまいます。

こんな一連のことがあった後、彼女は前出の任務を担って旅に出ることになるのですが、カタブツの彼女の痛い演技が上手すぎて、彼女に同情せずにはいられない。不器用で、おそらく男性経験がなく、神様に忠実に善行を行って生きていれば、良いことがあるはずなのになぜ?と言う気持ちが、その演技からひしひしと伝わってきて、強烈過ぎて打たれました。

この映画自体かなり強烈で、進むにつれてどんどん変な方向に進み、やがては衝撃的な展開をしていくんだけど、映画祭での評判はあんまり良くなかったみたい。私にとっては相当心に残る良い作品で、ヘンテコな部分含めていつまでも語りたくなるような作品でした。でもそんな感じだから、日本で配給されるかどうかは謎。商業的な可能性はまったく感じない映画でしたが、どこかの会社が放映権だけでも買ってくれて、WOWOW辺りで放映してくれたらいいな、と心から思っています。

2014年4月22日火曜日

エマ・トンプソンがノミネートされなかった理由

みなさん今晩は。大変ご無沙汰しております。前回エントリー、確認したら1カ月以上前でした。何を隠そう、オスカーの話題と言うのは季節ものでありまして、12月~3月の4か月を過ぎると、途端に書くことがなくなるんだな。それに加え、今シーズン最後のスキーで右手の小指を骨折すると言う失態により、思うようにタイプが出来なかったこの1カ月。こういう時こそ、人差し指一本スマホでアップするべきなんでしょうな。

さて、先日ようやく、「ウォルトディズニーとの約束」なる映画を見てきました。この作品、トム・ハンクスとエマ・トンプソンと言う、オスカーがこよなく愛する二人が主演でディズニー社の大親分ウォルト・ディズニーその人が題材の、絶対にオスカー取りたいんです丸出しにも関わらず、見事にオスカーから無視されてしまった作品。何が嫌われたのか、気になってしょうがなかったんです。私としては、このオスカーシーズンに一番期待してた作品の一本だったから。どんだけ出来が悪いんだろうと見に行ったら、とても良い作品でした。

思うに、今回の惨敗は、題材と実際の作品の大きすぎるギャップに尽きると思う。メリーポピンズが出来るまでの秘話、って言われて、トム・ハンクスとエマ・トンプソンと言う顔ぶれを見たら、なんだか陽気で楽しいコメディを連想するじゃないですか。ふたを開けてみると、ものすごく重いんですこの映画。要は、幼少期の悲しい思い出=トラウマに捕われた初老の女がやっと心を開くことを学ぶ話。期待にこたえてくれなかったお父さんへの抑えられない愛情と相反する恨みを乗り越えて、やっと彼を肯定出来た時に彼女は自由になる、って話なんだけど、予告からも、題材からもその暗さは全く想定できなくて、ゆえに見に行く時に期待するものと与えられたもののギャップに、観客は戸惑うわけです。良い話だし、作品自体は悪くないので、見た後の不快感はないのだけれど、映画って、何を期待して見に行くかって言うのが、既にその作品の評価の半分くらいを決めてしまうものなんですよね。この作品を見ながら、「あー、なるほどそういうことね~」と残念になりました。

その映画に何を期待するのかは、往々にしてその作品がどのように宣伝されているか、に左右されるもので、騙しの宣伝によって「思い込み」を誘導され、見終わった後に「すごいアクション映画って宣伝だったけどこれドラマじゃん!」と言うような、完全に騙されたと嫌な気持ちになるのは良くある話。「ウォルト・ディズニーの約束」に関して言うと、それとはちょっと違って、これはもう題材とキャスティングで既にこの話には無理があると言うか。トム・ハンクスもエマ・トンプソンもミスキャストなわけではなくて、二人ともとてもはまっているのです。ただ、この二人と言うことで観客はデフォルトとして「コミカルな映画」を期待してしまい、そこに来て題材がメリーポピンズと言うだけで、もう内容が暗いと言うことは許されない構造になっているので、宣伝がその作品の内容そのままを伝えていたとしても、観客はまさかこの作品が重い作品とは思わないわけです。

アカデミー会員の皆様も、この作品で幸せな気分になろう、と思って見に行ったら、切ない気持にさせられてしまって、なんだか腑に落ちない。消化不良な感覚になっちゃったから、満足感を得られずに、票が集まらなかったんじゃないかな。ちょっと気の毒に思いました。

にしてもエマ・トンプソン、20年前と印象が全然変わらないのはなんででしょう。彼女は92年度の「ハワーズエンド」で各賞を総なめにした末にオスカー主演女優賞を受賞していますが、私はその翌年の「日の名残り」が彼女の最高傑作だと思っています。見てない方は、ぜひご覧あれ。


2014年3月18日火曜日

日本文化に浸る週末

オスカー無事終了と言うことで、大阪に行って参りました。

大阪市役所らしい


目的はこれ、春場所観戦!!!



オスカーほどではないけれど、スポーツ観戦大好きです。
特に相撲は、子供の頃から大好き。今回は、勢と遠藤の活躍を楽しみに、数ヶ月前からチケットを取って、わざわざ大阪まで遠征してまいりました。

幕内土俵入り

相撲の結果は、特に番狂わせもなく、両横綱も遠藤も勢もその時までは全勝だった大砂嵐も勝ち、まあ楽しかったけどもうちょっとドラマが欲しかった結果に終わり。

その後、夜ごはんをどこで食べるか迷った挙句、友達に教わった天満と言う地区に行き、焼肉を頂くことにいたしました。

行列のできる店「肉五郎」運よく入れました

旅行先で食べるものは美味しくなくちゃ嫌!ということで、行く前に何人かにヒアリングをし、「大阪で焼肉を食べるならホルモンだよ」と言う意見を多く頂いたので、通常あんまりホルモン得意じゃないんだけど、挑戦することに。何を頼んで良いのか分からないので、ホルモン盛りなるものを頼みました。5種類くらいの部位が盛られて一皿980円。食べたら美味しい!!これにハラミ2人前と、サワー2杯×二人分と、サラダ2種類、キムチを頼んだらもうお腹いっぱい。大満足でお会計をすると、全部で5400円でした。

全部で5400円だよ!一人分じゃないよ!

大阪の懐の深さを感じつつ、友達からの「天満は一軒でやめてはいけない。かならず数件ははしごすること」と言う言葉を思い出し、お向かいにあるお寿司屋さんで数貫つまみながらお酒を飲んで次の動きを決めることに。〆の一品は食べてこなかったからね。お腹一杯だけど、ご飯ものちょっとなら入るでしょう。

ところが、お寿司屋さんに行くと、今日は仕入れを間違えて、もうネタとシャリが終わってしまったという。大してお腹がすいていなかった私たちは、じゃあちょっとしたおつまみだけ頂きますと言い、焼酎を注文して居座ることに。

これが長い夜の始まりだった。。。

大阪は、皆さん気さくで話しやすい。「どこから来たの?」から始まり、隣に座っていたおばさんとすっかり仲良くなった時には、私たちも焼酎3杯くらい飲んでいたかな。そのうち、お店のお母さんがサービスでいろんな品を出してくれて、すっかりそこに居ついてしまいました。そこのお母さんは栃木出身、最初に話しかけてきたおばさんも長崎出身で、土地の人じゃなかったのをいいことに、話はどんどん文化の違いや昔の苦労話へと発展し。その頃には私と友人はすっかり出来あがってしまっておりました。

そこへ、おばさんの旦那さん、個人タクシーを運転する、ちゃきちゃきの大阪人のおじさんが参加し、もう完全に新橋の飲み屋ムードに。おじさんどんどんいろんなものを注文し、食べろ食べろと勧めるもんだから、私たちお腹いっぱいなの忘れて結局沢山食べちゃいました。

手作りクワイチップス。絶品!

牡蠣バター

牡蠣フライ

のど黒の煮つけ

二人の馴れ初めから、方言の指導まで、いろんなことを話してすごく楽しい夜を過ごしたのだけど、ひとつとっても印象的だったこと。それは、65歳のおじさんに、「今ホルモン食べてきたんだ~。美味しかった!」と言った時のこと。ホルモン=大阪名物と思っていた私に彼は、「ホルモンなんて、食べもんやない。放るもんや。俺らの年代は、肉と言ったら牛肉しか食べへん」と言ったのです。根深い歴史が潜むその発言に、大阪の、全然違う一面を垣間見た気がしました。おじさんすごく良い人で、そのあと私たちをホテルまで送ってくれて、本当に楽しいひと時を過ごしたからこそ、なんだかすごく複雑な気持ちになる一言で。これが現実なんだろうなあ。

結局この店のお会計は8200円。ほとんど食べ物注文してない二軒目が一軒目よりだいぶ高いって、どんだけ飲んだんだって話ですが(注:上の写真はすべてお隣さんからのおすそ分けなので、払ってません)、翌朝起きると頭は痛いわ気持ち悪いわで、結局何も出来ぬまま、新幹線に乗って帰京しました。

いろいろと勉強になり、楽しかった大阪旅行。また行こうっと。

2014年3月10日月曜日

「アメリカンハッスルよりも、ジェットスターのことについて書きたい」と言う題材を1ヶ月放置してました

概要:2月3週目、アメリカンハッスルについてブログを書こうと思ったものの、作品があまり刺さらず、加えてその週末に体験したLCCが強烈な印象を残したため、急遽そっちについて書いたのだが文章がまとまらずに今まで公開出来なかった、と言うもの。遅ればせながら公開させていただきます。↓↓↓

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さて、全然話は変わりますが、先週末(注:2月14日)の雪はすごかったですね。
私は月曜日お休みを取り、土曜日から2泊3日でニセコにスキーに行く予定を年末から入れており、それはそれは楽しみにしていたわけですが。。。土曜日の羽田、国内便はほとんどキャンセル。除雪作業が間に合わないとかで、夜までほとんど機能しなかったようです。

私の便は午前10時で、もう早朝から欠航のお知らせが来ていたわけですが、なんとか振替便に乗れないかと羽田空港に向かいました。前日の雪の上に大雨が降り、UGGが水につかって変色するくらいの悪質な道路環境の中、いつもの倍くらいの時間をかけ、モノレールに乗り継いで羽田に向かったわけです。

羽田に着くと、ロビーは人であふれかえっていて、変更希望の列には大袈裟ではなく100人以上並んでいる状態。その上、搭乗手続きは中止されていて、午後の便もどれくらい欠航になるか分かりませんとか放送している。こりゃあ埒が明かん、と、あきらめかけたその時、閃いたのです。成田はどうなんだろう?と。

と言うのも、たまたま前日、同僚との会話で、LCCが参入したことで最近は成田から国内線に乗る人が増えている、でも成田に行くのに時間もお金もかかるから、結局羽田の方がいいんじゃないの?なんてことがたまたま出てて、軽く1時間くらい、LCCについてのやりとりがひとしきりあったんです。そこで思ったの。成田で飛行機が飛んでるなら、今持ってるチケット返金してもらって、LCCで取り直して行く方法があるのではないかと。グーグル検索で「LCC 成田 千歳」と入れると、すぐにジェットスターと言う会社の名前が出てきました。調べると、一日4便飛んでいる。そして席も空いている。片道何と9900円!早速私は、羽田空港の片隅でiphone からチケットを予約し、成田へ向かうことにしました。
Yes, Jetstar!

なんせ初めて使うLCC。勝手がわからないが失敗するわけには行かない私は、しっかりホームページを読み、一つ一つ確認しながら進んだのですが、この激安LCC、何につけてもお金を取るんです!!!まず、座席指定のページに進むと一番後ろの真ん中の席でも450円と書いてある。一番前の席だと200円アップ。非常口の席だと400円アップ。その次のページに行くと、荷物を預ける場合は20キロまで1500円と書いてある。私の荷物は小さいので、「預けない」をチェックして次のページに進もうとしたところ、「予約時に申し込まず、カウンターで申し込むと高額を請求することになります」と、ものすごい勢いで脅してくる。でもその場合にいくらアップなのかは書いてない。

すごいな~と思いながら、30分前までに搭乗手続きをしないと絶対乗れませんと言う、これまた脅しにも似た注意書きに促されて、1時間半前に空港についた私。カウンターは成田の奥の方の行ったことのないエリアにあり、これ以上ないくらい簡素化された雰囲気。スタッフの制服もなんとなく質素(←偏見)、JAL/ANAのように髪型や色に統一性もなく、なんとなく大きな違いを体感しながらゲートへと進みました。

 

ゲートから飛行機は、もちろんバス。いちいちJAL/ANAとの差を見せつけられながら搭乗してみると、確かに質素だけど、別にシートは全然問題ない。飲み物なんかも全部有料なので何も頼まなかったけど、1時間半だし、別に飲み物要らないし。その上ちょっと感心したのは、CAの皆さんが、JAL/ANAとは比べ物にならないほど英語が上手だったこと。後から分かったけど、ジェットスターってオーストラリアの航空会社らしい。

結果的に、LCCは非常に合理的で優秀で、国内旅行をするくらいなら、何の遜色もないエアラインであるとの結論が、私の中に生まれました。成田に行くのが苦にならない人は、ぜひともトライすべき。加えて私が感動したのは、成田空港には雪ひとつなく、朝から飛行機が飛んでいたことでした。さすが歴史のある国際空港。搭乗ゲートのテレビでは、羽田の便がいまだに飛んでおらず、インタビューされたおじさんが「明日は息子の結婚式だから、なんとか今日中に向こうに着きたい」と嘆いておりました。ああ、ジェットスターを教えてあげたい。羽田空港はもうちょっと頑張りなさい。

2月15日午後5時の成田空港滑走路。雪なんて、跡形もない。


2014年3月8日土曜日

オスカーを「獲る作品」と「獲るべき作品」

昨日、ジェーン・スーさんの番組にお邪魔して、このブログを紹介して頂いたところ、ものすごい勢いでアクセス数が増えました。今まで内輪の4人しか読んでいなかったため、かなり乱暴に使っていた表現等を訂正。問題発言気をつけないと。

さて、毎年オスカーシーズンになると、個人的に「これが獲ると良いな」と思う作品が沢山出てきます。アメリカの映画サイトとか情報誌とかでは、12月くらいからオスカー予想が盛んになってくるんだけど、たいていの予想にはwill win とshould win と言う二つの答えが載ります。will win は、「これが獲る」と言う作品。should win は「これが獲るべき」。主演女優賞で例えると、Will win: ケイト・ブランシェット、Should win: エイミー・アダムス、と言った具合に書かれます。

ところが、自分が「この人が獲るべきだし、獲るに違いない!」と思っている人がノミネートされないと、とたんにこの予想はwill にしてもshouldにしても真っ白になっちゃって誰に入れて良いか分からなくなる。私にとって、今回そういう状況だったのが、長編ドキュメンタリー部門でした。

結果的に受賞したのは「バックコーラスの女神たち」。でも、12月の段階で私が絶対的に信じていたのはサラ・ポーリー監督の STORIES WE TELL と言う作品でした。


女優であり、本作の監督であるポーリーが、自分の家族と出生の秘密について知るために、両親の歴史をひも解くと、思いもよらない事実に辿り着く。ノンフィクションとは思えないような物語はかなり衝撃的な展開をみせます。自分自身の話を、第三者的に淡々と追及する反面、彼女の目線は両親に対する愛に溢れていて、胸が熱くなります。

↓ 今調べたら、山形映画祭ってところで去年やったみたい。

http://www.yidff.jp/2013/ic/13ic12.html

数々の批評家協会賞を始め、ほとんどの主要ドキュメンタリー賞を総なめにしたこの作品が、何の間違いかアカデミー賞にノミネートされなかったことは、トム・ハンクスやエマ・トンプソンがノミネートされなかったことよりもサプライズ中のサプライズ。その時点でドキュメンタリー部門は、当てる自信がなくなりました。

アカデミー賞は、作品が良い、と言うだけでは勝ち取ることのできない賞です。誰が、どの時期に、どういうパターンで全米公開するか、誰がこの作品を作っているか、どのくらいの人たちが見ているか、すべての要素が揃った上で、作品が佳作だった時初めて、ノミネートされる最後の5本に残ることが出来、最終的に受賞することが出来るのです。今回この作品は、Roadside Attractions と言う会社が配給しましたが、オスカーにノミネートされるには弱かった。ワインスタインが配給してたら、ノミネートを逃すなんて失態はあり得なかっただろうと悔やまれます。

にしてもこの映画、日本の配給がついたって言う噂聞かないんだけど、誰か買ってくれないかな。

2014年3月4日火曜日

歴史を変えるオスカーに感じること

オスカーから(それでも)一夜明け、今回はいろいろと思うところあるオスカーだな~と感じたので、忘れる前に書きとめておくことにします。

まず、何と言っても感慨深いのは、アカデミー会員の94%が白人のこの賞が、86回目にして初めて、黒人監督の作品に作品賞を与えるところまで来たこと。オスカーファンの常識として、最初に学ぶことのひとつは、黒人で史上初めて賞を獲ったのは、「風と共に去りぬ」のマミー役、ハティー・マクダニエルと言うこと。その後、シドニー・ポワティエ、ルイス・ゴセットJr.が賞を獲り、私がリアルタイムで受賞を見た初めての黒人俳優は89年度のデンゼル・ワシントン(「グローリー」)でした。デンゼル・ワシントンが演じた役柄は、南北戦争で南部のために戦った黒人兵の役。ご存じ南部は、奴隷制度を守るために北部と戦争をしたようなもので、それの犠牲になって前線で戦った黒人部隊を描いた作品でした。

エドワード・ズウィック監督作品「グローリー」

 

この年は、スパイク・リーが、「ドゥ・ザ・ライト・シング」で黒人として初めてオリジナル脚本賞にノミネートされた年でもあり、でもこの作品は作品賞にノミネートされず、授賞式では何かの賞のプレゼンターとして出てきたキム・ベーシンガーが「一番大事な映画がノミネートされてない」と不服を言った光景を、まざまざと覚えています。ほぼ四半世紀前の話。


こちらがスパイク・リー
私はこの人が、最初の黒人オスカー監督になると思ってた

この2年後、またまた若手の黒人監督、ジョン・シングルトンが「ボーイズンザフッド」で史上初めて監督賞にノミネートされます。結局そのあと、黒人監督の映画が作品賞を獲るまで実に22年。(監督賞はまだいない。)ケネディ没後50年。アメリカのさまざまな業界を考えても、特に白人優越主義のハリウッドが変わるまでにかかった年月は、なんて長いものなんだろうと、つくづく感じました。

デンゼルが初受賞したすぐ後、翌年にはウーピー・ゴールドバーグが「ゴースト」と言う作品で助演女優賞を受賞します。デンゼルにしろ、ウーピーにしろ、あの頃の彼らのスピーチは本当に胸に響く内容で、彼らはアフリカ系アメリカ人と言う人種全体を背負って受賞している意識がすごくありました。黒人女優として史上初めて主演女優賞を受賞するハル・ベリーが受賞した頃くらいまで、そんな風潮があったかな。その頃から、2000年代に入るとほぼ必ずノミネートの中に数人は黒人が入るようになってきて、受賞も珍しいことではなくなり、次第にスピーチの内容は、90年代の人種を背負っているそれではなく、俳優としての喜びを表すようになりました。肌の色は関係なく、実績で評価される時代になったという証拠でしょう。

前出のウーピー・ゴールドバーグは、受賞する前にも1度、主演女優賞にノミネートされています。1985年のスティーブン・スピルバーグ監督作品「カラーパープル」です。「それでも夜は明ける」と同じ南部の奴隷制度について描いたこの名作は、その年最多の11部門ノミネートされ、無冠でその夜を終え、それは今日まで、無冠で終わったノミネーション数の記録として残っています。

2014年3月3日月曜日

とりあえず、ハリウッドの夜は明けた

今年も終わってしまいましたアカデミー賞。皆さんは何部門当たりましたか?って、真剣に予想をしている人なんて、そう沢山はいませんね。私は17部門でした。(全予想は昨日のエントリーor 下記写真を参照だけど、ギリギリ今朝になって主題歌だけLet It go に変えました)。24部門中17部門と言うのはかなり順当に当たった年と言うことになるのだけれど、争う相手は19部門当たったので、勝負は負けです。近々ディナーおごらないと。

予想表。ハイライトされてるのが私のピック。
横についてる丸印が、実際に受賞した作品。

今年は本当にサプライズが少なく、大本命と言われていた「それでも夜は明ける」が作品賞。いろんな意味で時代を感じます。まず、黒人監督作品の作品賞受賞は初めて。20年前には考えられなかったことだから、やっぱり感慨深いものはあります。監督賞はメキシコ人のアルフォンソ・キュアロンだったけど、これも初めて。爺さん婆さんが牛耳ってると言われてきたアカデミーも、変革を遂げてるというのは嬉しいことです。最多受賞は「ゼロ・グラヴィティ」なのに作品賞は3部門しか受賞してない「それでも夜は明ける」。作品賞は最多受賞作に行く、という法則が2年連続で崩れました。もう来年からは、予想の仕方を変えないといけないわ。
 
私たちアカデミーマニアにとって、有給休暇を取ってまで鑑賞するアカデミー賞の醍醐味は、「サプライズ」にあります。鉄板と言われている作品が獲らないで、獲らないよね?と思ってたダークホースが最後の最後で賞をさらう。ほかの4人は全員受賞歴のある名優の中、一人だけ初ノミネートだった11年前のエイドリアン・ブロディ(「戦場のピアニスト」)がそうでした。鉄板と思われる本命はいなかったけど、ほとんどの人はこのニューフェイスに賭けていない中での受賞。それがあると、その場は一気に盛り上がり、ああ、オスカーってなんて楽しいの?!という雰囲気に包まれるのですが、本日はそれが皆無で、ちょっと残念でした。やっぱりレオに獲らせたかった。一票入れてないけど。一番のサプライズが、短編アニメって、ちょっと地味過ぎて盛り上がりに欠けるわ。

胸を打つスピーチも、今年は少なかった気がする。ルピタ・ニョンゴとかすごく可愛くて良かったけど、もうちょっとスペシャルな何かが欲しかった。ジャレッド・レトは感動的だったけどちょっと長すぎた。マコノヒーの「10年後の自分を目指す」スピーチもちょいと興ざめだったし。あと、今年は放送局(ABC)のカメラマンの出来てなさっぷりが酷くて、コマーシャルに行く時のタイミングはずれるわ、注目しないといけない人の抜きは出てこないわ、なんだか大丈夫?と思う内容でした。ちょいと残念。

それでも私にとって今年のオスカーは、プレゼンターにダニエル・デイ=ルイスが出るというだけで、充分に見る価値があるもので。客席には座ってくれなかったけど、出てきてくれただけで、有難すぎる話です。ブランジェリーナも揃って出てたし、華やかな顔ぶれはすごく多くて、いつにも増して豪華な楽しい感じの授賞式だったことは、良かったんじゃないかな。ここからまた、来年への365日が始まるというわけです。

授賞式途中に、司会のエレンが「リツイート数の記録破りに挑戦!」と言って
周りに居たスターたちと撮った写真。実際にリツイートが殺到で
一時ツイッターはパンクしてしまいました。豪華で楽しい最高の一瞬。
 

2014年3月2日日曜日

いよいよ明日!それでも夜は明けてしまうのか

ほとんどブログも書かず、ボーっとしている間に、とうとう前日になってしまいました86回オスカー。ふたを開けてみると、作品賞9本のうち、本編を見ることができなかったのは2本。「それでも夜は明ける」とスパイク・ジョーンズの「Her」です。問題は、「それでも夜は明ける」が、有力な作品賞候補で、「Her」が有力な脚本賞候補と言うところ。やっぱり基本的に、見てない映画に一票入れる、というのは何とも難しいものです。

今回は、まれにみる当たり年と言われ、どの作品も非常に出来が良いのでどれが獲るか分からない、なんて言われてるんだけど、どうだろう。個人的には好きな映画が少なく、なんとも煮え切らない気持ちです。「ゼロ・グラヴィティ」はすごいな~と思ったけど、今までのオスカーの歴史を考えると、こういう革新的な作品が作品賞に輝くことはほとんどない。類まれなる革新的な作品こそベストピクチャーと呼ばれるにふさわしいと思うのだけど、実際にはそうならないことがオスカーの常なのです。では、もう一方の候補「それでも夜は明ける」が去年一番の作品と言うことになるのか。

わっかんないな~。正直全然分からん。80年代後半から90年代、00年代と見てきて、一定の傾向があることは確か。たとえば80年代、90年代は、一番ノミネーションが多かった映画が結局作品賞に輝く、とか、作品賞に輝いた映画は、最終的に受賞数も一番多いとか。ユダヤ人の多い映画業界だから、ホロコーストとかナチス関係扱うと強いとか。このあたり、結構鉄板で、ずっとそれに沿って受賞数決めたり作品決めたりしてたんだけど。これが最近、必ずしも当てはまらなくなっている。もう何を信じて良いのか全然わからないのよね。

思うのは、大体30年周期くらいで世代って変わるから、ここ10年くらいはパターンが変わってきたんじゃないかなってこと。80年代バリバリの40代だった人たちは、今は70過ぎになってるわけで、その頃大御所と言われてた人たちはもういなくなってる。今40代は1970年代の生まれだから、ナチスの話より公民権運動とか、ゲイとか女性の市民権だとか、そういうことの方が身近な問題として育ってきた世代で、だから強い映画の傾向もちょっと変わってきたんじゃないかなと。私たちのオスカー予想も、それに合わせて傾向と対策を変えないといけないんだけど、いまだに昔のパターンに囚われて、最近あんまり当たらなくなってきたのよね。いけません。

そんなことを考えながら、予想を終えたら、「ゼロ・グラヴィティ」が7個受賞と言う内容になってしまった。絶対そんなに獲らない。でももう時間もないから、しょうがない、これにて固めます。いずれにしても、明日が楽しみだ!

私の予想
作品賞: ゼロ・グラヴィティ
監督賞: ゼロ・グラヴィティ
主演男優: マシュー・マコノヒー
主演女優: ケイト・ブランシェット
助演男優: ジャレッド・レト
助演女優: ルピタ・ニョンゴ
脚本賞: 「HER 世界でひとつの彼女」
脚色賞: 「それでも夜は明ける」
外国語映画: 「偽りなきもの」
撮影賞: 「ゼロ・グラヴィティ」
編集賞: 「アメリカンハッスル」
長編アニメ: 「アナと雪の女王」
美術: 華麗なるギャツビー
衣装: 華麗なるギャツビー
作曲賞: 「あなたを抱きしめる日まで」
主題歌: Happy
録音: 「ゼロ・グラヴィティ」
音響: 「ゼロ・グラヴィティ」
視覚効果:「ゼロ・グラヴィティ」
ヘアメーク: Jackass
ドキュメンタリー長編: バックコーラスの女神たち
ドキュメンタリー短編: The Lady in Number 6
短編映画: Aquel No Era Yo
短編アニメ: ミッキーミニーの救出大作戦

2014年2月27日木曜日

レオが受賞する姿を見たい

いよいよ4日後に迫ってまいりましたアカデミー賞。皆さん既にベットは固まりましたか?

先週から、ものすごい勢いで関連作品を見ていますが、最終的に「それでも夜は明ける」は未見で迎えそうです本番当日。よって作品賞をどうするかが非常に難しい。見てない作品に一票を投じるのだろうか。

さて、本日は「ウルフオブウォールストリート」を見てきました。7時に始まって終わったのが10時。つまりたっぷり3時間の作品でしたが、さすがスコセッシ。面白かった。たま~にこのシーンなげえな、と思うところがあるのは今までのスコセッシ作品と同じなんだけど、でも抜けてる時のスコセッシ映画は本当に面白い。「グッドフェローズ」見た時の感覚思い出しました。




久々にレオが、主演男優賞にノミネートされてます。このノミネートは結構サプライズだったんだけど、でも実際に作品見ると、素晴らしい演技をしています。酒と女とクスリが大好きなイケイケの賢い若者、というのは、本人そのものじゃん、と思わないでもなかったけど、熱演です。本当に素晴らしい。助演男優にノミネートされてるジョナ・ヒルも良いけど、やっぱり何といってもレオが良かった。

ちなみに、今回主演男優賞のフロントランナーと言われているのは、「ダラスバイヤーズクラブ」のマシュー・マコノヒーで、こちらの作品は先週末見たのだけれど、いまいちマシューに入れるかどうか、決めかねておりました。痩せたのは分かるんだけど、そして熱演も分かるんだけど、南部のカウボーイ役って、それ本人じゃん、ってこちらもまたそんな感じで。でも今日、「ウルフ」の中にちょっと出てきたマシューが素晴らしすぎて、今年の主演男優賞は彼でも良いや、って思うようになりました。レオの演技の方が私は良かったけど、ちょっとそこに賭ける勇気はないんだな。(結局勝ちたい気持ちの方が強い。)

ちなみにレオは、ノミネートされるのは今回で4回目なんだけど、本当はもっとノミネートされてて良いはずの俳優で、タイタニックの時も、ギャングオブニューヨークの時も、ディパーテッドの時も、なぜか周りがノミネートされて彼だけ無視される、不運な役回りが多かった。今回当然入ると思われてたトム・ハンクスやロバート・レッドフォードがノミネートされず、代わりにレオが入ったことは、世代交代を感じ、ようやくレオが受賞するのを見られるかも知れない、と思わず期待してしまう。アイドル的な人気があると、どうしても受賞が遅くなる傾向があるけれど(トムクルーズ、ブラピ、ジョニデ、誰も受賞経験ないからね)、レオはもともと10代でノミネートされてる演技派で、巨匠スコセッシに認められる俳優だから、今回一番のアプセットがレオの受賞だったら、なんだかとっても嬉しいなと、ひそかに期待しているのであります。(一票は入れないけどね)

2014年2月24日月曜日

いよいよ一週間後!でも絶対獲らない作品こそ見て欲しい

前回から、また間が空いてしまいました。すみません。

いよいよ今日より一週間後、3月3日はひな祭りと同時に、アカデミー賞授賞式です。まだ未見の作品が多いため、今週は大変です。見れるだけ見るよう頑張ります。

昨日、ダラスバイヤーズクラブを見てきました。マコノヘイもジャレッド・レトも素晴らしく、ジャン・マルク・ヴァレーも相変わらず力あるな、と楽しんで参りました。が、まあそのくらいかな。私の人生において何らかの影響を与えた映画かと言えば、そうではない。レトの助演男優賞は良いと思います。ぜひとも取って欲しい。マコノヘイはちょっとまだ分からないなあ。そこはネブラスカのブルース・ダーンを見てから決めたいと思います。(今週末)

さて、オスカーには必ず、「絶対獲らないけど、ノミネートに値する」と複数部門でノミネートを受ける作品があります。特に、作品賞候補が10本になった最近ではそれが顕著で、だって10本もノミネートしたら、絶対獲らないけどノミネートされたんだな、って作品があって当たり前でしょう。今回もしかりで、その一つが「あなたを抱きしめる日まで」と言う作品です。



この映画、実話をもとに、コメディ俳優のスティーブ・クーガンが脚本、助演をつとめ、ジュディ・デンチが主演の感動の物語です。ジュディ・デンチが間違うことはまずないので、「ああ、この作品は良いものになるな」と、脚本の時点で思ったものですが、出来上がった作品は、想像通り、素晴らしいものでした。

でもね、この映画が素晴らしいのは、ジュディ・デンチの力だけじゃないんです。

映画と言うのは、監督が作るもの。脚本が素晴らしくても、俳優が芸達者でも、監督が良くなければ絶対に名作にはなりません。それではこの作品の監督は誰なのか。

スティーブン・フリアーズと言う名監督です。見たことないでしょう?↓



この人、いわゆる「雇われ監督」(director for hire)で、自分で脚本を書かない、昔ながらの職人監督です。でも、本当の意味での「職人」。請け負った仕事をここまで完璧に、脚本以上のものに仕上げる人はなかなかいません。

私が初めてこの人の映画にノックアウトされたのは、1988年の「危険な関係」でした。グレン・クローズとミシェル・ファイファー、そしてジョン・マルコビッチが三角関係を繰り広げる、あの作品です。グレン・クローズの悲哀を魅せるラストシーン、男前でもなんでもないマルコヴィッチをあそこまで魅力的に映す演出、なんと素晴らしい映画だろう、と子供ながらに感動しました。ほどなくして私は、それよりも前に公開されていた「マイ・ビューティフルランドレット」と言う作品に出会います。私の人生で影響を受けた5本の一本に入る作品です。ダニエル・デイ・ルイスの魅力をあそこまで引き出せる監督はほかにいない。

2年後彼は、またしても名作を撮ります。「グリフターズ」です。3人の詐欺師たちを描いたこの作品、軽妙で爽快で物悲しくて。高校生の私は、このフリアーズと言う監督は、きっと次の作品で私の大好きなオスカーを獲るに違いない、と確信したものです。

それからはや24年。結局フリアーズはオスカー作品賞も監督賞も獲ることなく、今日に至ります。その間に彼は、15本の作品を撮っています。音楽好きの必見作品「ハイフィデリティ」や、ヘレン・ミレンを主演女優賞へと導いた「クイーン」。みんな、フリアーズの作品です。こんなに名作を残していながら、彼の名前はほとんど一般に知れ渡っていない。ほかにこんな監督がいるでしょうか。

25年来の彼のファンと言うことはさておいて、私が彼を本当に素晴らしいと思うのは、この30年間、たゆまず世の中に佳作を送り出し続けていることです。「あなたを抱きしめる日まで」の主演にして名女優ジュディ・デンチは、「監督がスティーブンだったから、何の苦労もなかった。既に4回一緒に映画をやっていて、私たちの間には話さなくても伝わることがある」とインタビューで言っています。ジュディ・デンチがこんな言葉を送る監督は、なかなかほかには居ないでしょう。

タランティーノやウディ・アレン、今回で言うならスパイク・ジョーンズとかデビッド・O・ラッセルとか、個性を主張して目立つ監督は沢山います。でも私はフリアーズこそ、監督業と言う専門職に徹した、映画史に残るべき監督だと思います。本当の意味での演出家。「あなたを抱きしめる日まで」も、今までの彼の作品に負けないくらいの名作です。ぜひ見てください。

2014年2月13日木曜日

NHK に物申す

こんばんは。

「次回はアメリカンハッスル」です。と結んだことで、次のブログがまた先になっちゃうな、と公開してから気づきました。救済措置として残しておいた(予定)に基づき、全然違う話題で進めさせていただきます。

ベルリンからの時差ぼけで、一日中デスクであくびをしたのち、「もう無理無理」と定時にするりと帰宅した私。本当の狙いは、日本人フォーカスのオリンピックの生中継を見るためです。毎年同じ時期に出張がある私は、バンクーバーもトリノもベルリンで見ることになったのですが、外国でオリンピックを見るほど歯がゆいことはない。国を挙げてのお祭りであるオリンピック、どこの国でも、そこの国の強い競技しかやらない上に、弱い選手なんて全くテレビに映してもらえないわけです。出張中私が見ることができたのは、ドイツVSカナダ、カーリング男子でした。




カーリング自体は、見れば見るほど面白いスポーツ。昨日の日本VSロシア(女子)なんて、すごい興奮で応援しました。ロシアの女子は24歳平均でみんな美人だしね。試合も素晴らしかった。でも、ドイツのおっさんがやるカーリングなんて、もちろん興味ないわけですよ。やっぱりオリンピックは、自国を応援することに喜びがあります。と言うわけで、帰国後今晩の生放送はものすごく楽しみにしていたわけ。

ところが!

8時台、中継は一つもナシ。BSですら、マンチェスターだかなんだかのサッカーの試合放送してんの。なんで???

おそらく答えは、日本で人気の競技がないから、今晩は生放送する価値ナシってことなんでしょう。でもね、オリンピックは4年に一回しかないわけですよ。どの競技も、たとえ日本人が出ていなくたって、生放送される価値があると思うの。今だって、クロスカントリー女子、とか、ショートトラック女子、とかやってるはずなんですよ。BSくらい、その中継してもいいんじゃないの?

海外でオリンピックを見た経験があるからこそ、オリンピックくらい、平等にダラダラ生中継してほしいと思う。生で見るからこそ楽しい番組なのだから。そこに日本人が出てなくても、それを見て喜ぶ外国人は沢山いるはずだから。オリンピックは、それくらい価値のあるものであって欲しい。

ところで、昨日帰国してすぐに見たハーフパイプ男子の結果。平野歩夢君の雄姿を見て思ったことは、ゆとり教育も悪い面ばかりじゃなかったんじゃないかな、ということ。先日すごい発明をした小保方さんの時も思ったんだけど、これは世代の特徴を表しているのではないかと。アルベールビルで伊藤みどりが銀メダルを取った時、彼女は開口一番「日本の皆さんごめんなさい」と言いました。金メダルを期待されていたから。ゆとり前の世代では、そういった国に対する責任とか、社会でどうあるべきとか、そういう概念を押しつけられた教育を受けたせいで、オリンピックですら国を背負って戦ってるみたいなことになってた気がする。でも、今の子たちは、良い意味で自分の目標達成とか、成長とかを追及してオリンピックに辿り着いている気がして、それって素晴らしいことじゃないですか。ゆとり教育が良かったんじゃないかな、と15歳の平野君を見て思いました。

最後に、あまりにも印象深かったので思わず載せた上記の写真の真ん中、ドイツ男子カーリングチームのおっさんJohn Jahr。この人の写真を探してたら、こんな面白い記事を見つけました。なんと彼、48歳の百万長者らしいよ!

http://www.canada.com/olympics/news/john-jahr-a-48-year-old-millionaire-curler-from-germany-savoring-his-1st-and-last-olympics

2014年2月12日水曜日

今年のベルリンは暖かかった

ブログを始めます、また明日!なんて言ってから数週間。三日坊主にすらなれませんでした。すみません。

さて、オスカーの話題を徒然につづる予定だったこのブログですが、ここのところ、オスカー以外の方が面白い話題が多くて困ります。とりあえず今日は、最近行ってきたベルリンについてちょっと書いてみようかな。

毎年、この時期に出張で行くベルリンは、ご存じドイツの首都ですが、ヨーロッパでも他に類を見ない面白い町。すべては、町が東と西に分断されていたという歴史に因るものです。ベルリンの壁が崩壊してはや四半世紀になろうとしているけど、旧東ベルリンだった地域は、やっぱり今でも東ヨーロッパの雰囲気がぷんぷん残ってて、すごく面白い。


 


近代的なビルばかりの西ベルリンに比べて、東の方は建物が全部グレーで古くて大きい。ナチスドイツの時代から変わってなさそうな文字の看板とか、とにかく「ザ・東欧」という私の中の勝手なイメージそのままの風景で、でもその一つ一つの建物に入ると、中はものすごいおしゃれなお店になってたりする。それは、東西が統合された時、お金のない東出身の人たちに交じり、ヨーロッパの新進アーチスト(たいていお金がない)が、物価と地価の安いこのベルリンに移り住んで来て、いつの間にかそこには世界中からアーチストが集まるようになったかららしいんだけど、町中にその片鱗が見えて、本当にユニークなのです。






「ベルリン」という名前自体は、ドイツ語で「熊ちゃん」みたいな意味だそうで、なので市内には、マスコットである熊のオブジェがいたるところにある。可愛い。そんなベルリン、首都なのに、日本からの直行便がありません。ま、首都なのに一番発展している都市ではない、とか、そういうことはすべて、やっぱりあの戦争からの東西分断が原因にあるわけで、そんなところでも興味深い町です。

さて、直行便がない中、今回はチューリッヒ経由のスイス航空で飛んだのですが、機内上映でようやくBlue Jasmine を見ました。今回一番受賞の確立が高い(ほぼ当確)ケイト・ブランシェット主演のドラマで、彼女の演技はいたるところで褒められてるのを読んできたけど、いやあ確かにすごかった。基本的に、彼女の演技がなかったら成り立たないような物語なので、この主演女優賞はまったくもってwell deserved と思いました。今回の主演女優賞候補5人はエイミー・アダムスを除いてみんなオスカー受賞経験がある人ばかりなので、みんな上手なんだけど、今回ケイトが演じたジャスミンと言う役は、上流階級の世相に疎いマダムと、精神的に参っちゃった数年後の彼女と言う、同じ人間が変わってしまった様を絶妙なニュアンスで演じ分けなくてはならない。その難しい演技を、ものすごい説得力で演じていて、文句なく脱帽。今年の主演女優は彼女にあげなくちゃ間違ってるわ。

と言うわけで、一応このブログの主題である、オスカーの話題に無理やり持っていったところで終わりとします。本当は、招かれて行った知り合いのアパートに、ユダヤ人が隠れてた小部屋がそのまま残ってた話とか、ソチのフィギュアスケート中継見てたらカタリーナ・ヴィットが解説だったとか、そんな話を書きたかったんだけど、ま、その辺はまたネタがなくなったら書くということで。

次回はアメリカン・ハッスルです。(予定)

 
 

2014年1月31日金曜日

ブログを始めます、は投稿タイトルではなかったのか

こんにちは。銀座界隈で働くOLメラニー(仮称)です。

口から先に生まれてきたので、せっかくだからとブログを始める決心をしましたが、どうやったら始まるのかわからない。

今日のエントリーのタイトルだと思って入れたタイトル?は、ふたを開けてみたらこのブログ全体のタイトルで、早速編集をして変えたものの、こういうのってもっと熟考しなくて良いのだろうか。「メラニーブログ」的なところに「ブログ始めます」と書いている時点で、ブログをやる資格があるのかと、気後れする所存です。

さて、山ほどある書きたいことの中で、私がもっともはけ口を必要とする話題、それはやっぱり私のライフワークであるオスカー=アメリカアカデミー賞のことでしょうか。1989年度、ダニエル・デイ=ルイスが初めての主演男優賞を取ったあの年以来、アカデミー賞の魔力に取りつかれた私は、毎年アカデミー賞当日だけは、何があろうと必ずや生放送を見届ける、まさにアカデミー賞マニアへと成長を遂げて参りました。この25年、見逃したことは、一度たりともございません。

とはいえ、人々がこの話題に興味を持つのは、年末12月から2月末にかけてのみ。残りの9カ月はほかの話題を考えなくてはなりません。ブログに要求される、高水準での話題の豊富さと、それを上回る豊富な知識。これから鍛えて行く所存でございますゆえ、お付き合い頂ければ幸甚です。


さて、今日は初めてのエントリーで、右も左もわからない、練習回との認識なので、とりあえず写真アップロードの練習をしてみました。私の大好きな焼酎です。一年に一回、宮崎のなんとか酒造から発売になり、すぐに売り切れてしまうので、発売と同時に一升瓶を2本ほど購入してます。焦がし麦焼酎で、とっても美味しいの。

ちなみに、このブログには「三度の飯よりオスカーが好き」と書いてありますが、三度の飯も大好きです。加えてお酒も本当に好き。銀座界隈で働くOLは、焼酎を一升瓶単位でオーダーするのが基本です。基本的にはオスカーのこと、映画のことを書くつもりではおりますが、たまにいっぱしのOLばりにつまらない食べ物の写真なぞアップするかも知れません。その辺のことも、臨機応変にご対応いただければ嬉しいです。

気がついてみれば、本日祖母の命日。13年前の今日、祖母は100歳を待たずして、天国へと旅立ったのでありました。感慨深い今日を皮切りに、続く限り、このブログを続けてみようと思います。ブログにお約束の「絵文字」を見つけることすら出来ぬまま、初日のエントリーを終わらせて頂きます。

それではみなさん、また明日☆