2014年2月24日月曜日

いよいよ一週間後!でも絶対獲らない作品こそ見て欲しい

前回から、また間が空いてしまいました。すみません。

いよいよ今日より一週間後、3月3日はひな祭りと同時に、アカデミー賞授賞式です。まだ未見の作品が多いため、今週は大変です。見れるだけ見るよう頑張ります。

昨日、ダラスバイヤーズクラブを見てきました。マコノヘイもジャレッド・レトも素晴らしく、ジャン・マルク・ヴァレーも相変わらず力あるな、と楽しんで参りました。が、まあそのくらいかな。私の人生において何らかの影響を与えた映画かと言えば、そうではない。レトの助演男優賞は良いと思います。ぜひとも取って欲しい。マコノヘイはちょっとまだ分からないなあ。そこはネブラスカのブルース・ダーンを見てから決めたいと思います。(今週末)

さて、オスカーには必ず、「絶対獲らないけど、ノミネートに値する」と複数部門でノミネートを受ける作品があります。特に、作品賞候補が10本になった最近ではそれが顕著で、だって10本もノミネートしたら、絶対獲らないけどノミネートされたんだな、って作品があって当たり前でしょう。今回もしかりで、その一つが「あなたを抱きしめる日まで」と言う作品です。



この映画、実話をもとに、コメディ俳優のスティーブ・クーガンが脚本、助演をつとめ、ジュディ・デンチが主演の感動の物語です。ジュディ・デンチが間違うことはまずないので、「ああ、この作品は良いものになるな」と、脚本の時点で思ったものですが、出来上がった作品は、想像通り、素晴らしいものでした。

でもね、この映画が素晴らしいのは、ジュディ・デンチの力だけじゃないんです。

映画と言うのは、監督が作るもの。脚本が素晴らしくても、俳優が芸達者でも、監督が良くなければ絶対に名作にはなりません。それではこの作品の監督は誰なのか。

スティーブン・フリアーズと言う名監督です。見たことないでしょう?↓



この人、いわゆる「雇われ監督」(director for hire)で、自分で脚本を書かない、昔ながらの職人監督です。でも、本当の意味での「職人」。請け負った仕事をここまで完璧に、脚本以上のものに仕上げる人はなかなかいません。

私が初めてこの人の映画にノックアウトされたのは、1988年の「危険な関係」でした。グレン・クローズとミシェル・ファイファー、そしてジョン・マルコビッチが三角関係を繰り広げる、あの作品です。グレン・クローズの悲哀を魅せるラストシーン、男前でもなんでもないマルコヴィッチをあそこまで魅力的に映す演出、なんと素晴らしい映画だろう、と子供ながらに感動しました。ほどなくして私は、それよりも前に公開されていた「マイ・ビューティフルランドレット」と言う作品に出会います。私の人生で影響を受けた5本の一本に入る作品です。ダニエル・デイ・ルイスの魅力をあそこまで引き出せる監督はほかにいない。

2年後彼は、またしても名作を撮ります。「グリフターズ」です。3人の詐欺師たちを描いたこの作品、軽妙で爽快で物悲しくて。高校生の私は、このフリアーズと言う監督は、きっと次の作品で私の大好きなオスカーを獲るに違いない、と確信したものです。

それからはや24年。結局フリアーズはオスカー作品賞も監督賞も獲ることなく、今日に至ります。その間に彼は、15本の作品を撮っています。音楽好きの必見作品「ハイフィデリティ」や、ヘレン・ミレンを主演女優賞へと導いた「クイーン」。みんな、フリアーズの作品です。こんなに名作を残していながら、彼の名前はほとんど一般に知れ渡っていない。ほかにこんな監督がいるでしょうか。

25年来の彼のファンと言うことはさておいて、私が彼を本当に素晴らしいと思うのは、この30年間、たゆまず世の中に佳作を送り出し続けていることです。「あなたを抱きしめる日まで」の主演にして名女優ジュディ・デンチは、「監督がスティーブンだったから、何の苦労もなかった。既に4回一緒に映画をやっていて、私たちの間には話さなくても伝わることがある」とインタビューで言っています。ジュディ・デンチがこんな言葉を送る監督は、なかなかほかには居ないでしょう。

タランティーノやウディ・アレン、今回で言うならスパイク・ジョーンズとかデビッド・O・ラッセルとか、個性を主張して目立つ監督は沢山います。でも私はフリアーズこそ、監督業と言う専門職に徹した、映画史に残るべき監督だと思います。本当の意味での演出家。「あなたを抱きしめる日まで」も、今までの彼の作品に負けないくらいの名作です。ぜひ見てください。

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