2014年5月24日土曜日

驚異的な運と実力を持つ女優:ヒラリー・スワンク 【ネタばれ注意】!!!

カンヌ映画祭の結果はまだ出ておりませんが、カンヌ関連で頭から離れない女優がいるので時差ぼけついでに書き留めておきます。

彼女の名は、ヒラリー・スワンク。オスカーファンにとっては、無視することのできない女優です。なぜって彼女、今までに2回しかノミネートされていないのに、2回とも主演女優賞を獲っているのです。つまり受賞率100%。2回以上獲ってる俳優で、こんな人ほかにいるのかしら?少なくとも私が生きている時代には居ないはず。

さて、このヒラリーですが、あんまりしょっちゅう映画に出る女優ではありません。そして、受賞率は100%でも、作品のヒット率は一桁なんじゃないかと思うほど、どうでも良い映画にもしばしば出ちゃう女優です。よって、知名度も高くないし人気もない。美人でもない。でもね、まあ映画を見ると、ため息つくほど演技が上手いんだわこれが。

今回のカンヌでは、私の知る限り彼女が出ている映画は2本あり、ひとつは要介護の難病患者役。「最強のふたり」を狙ったんだろうな、と言うような内容の作品の、病人の方の役で、まあこの難病演技が真に迫っていて本当に上手い(らしい)。もうひとつは、精神を病んでしまった3人の女性を目的地まで送り届ける、どちらかと言うと介護をする方の役柄で、しっかりした31歳の独り者の女の役なんだけど、これがもう、地味なんだけどすんげぇ~上手い。こっちの映画はちゃんと見ました。


この作品 THE HOMESMAN は、トミー・リー・ジョーンズ監督で、開拓時代のアメリカ西部が舞台。さまざまな理由で精神を病んでしまった3人の主婦を、療養するために東部に送り届ける話なんだけど、本来男の仕事であるこの仕事を、31歳独身女のヒラリーが買って出る。砂漠を横断して行く途中には、原住民や野獣などに襲われる危険が伴う。でも彼女には守るべき家族もないし、男は頼りにならないしってわけで彼女が立ち向かっていくわけです。

彼女は独り者なんだけど家も土地も家畜も持ってて、料理も上手くて家事も出来る。精神を病んだ主婦達への優しさも人一倍あり、彼女達を治してあげないと、と言う責任感もある。毎日神様にお祈りを捧げ、絵に描いたような模範的な「良い人」。なんだけど、なぜか誰も彼女を娶ろうとしない。まじめで素直な彼女は、近所の独身男性を夕食に誘い、美味しいフライドチキンを作ってごちそうします。彼は喜んで、お礼に自分の作ったチーズを差出し、彼女はそれを喜んで受け取り、二人仲良くそれを食べます。すると彼女は唐突に切り出すのです。「あなたの財産と私の財産を合わせたら、今よりもっと良い暮らしを出来る。私は料理が出来るし、子供も出来ればなおさら良い。結婚しましょうよ。」軽く食事の招待を受けに来ただけの彼は驚いて言う。「君と結婚?あり得ない。君みたいに威張るやつは嫌だし、俺はここでの仕事が一段落ついたら東部に嫁を探しに行って、かわいい嫁を連れて来るんだ。あんたは良い人だけど、結婚なんてしたくないよ。」そして彼は翌日、彼女から夜逃げするかの如く、東部に引き上げて行ってしまいます。

こんな一連のことがあった後、彼女は前出の任務を担って旅に出ることになるのですが、カタブツの彼女の痛い演技が上手すぎて、彼女に同情せずにはいられない。不器用で、おそらく男性経験がなく、神様に忠実に善行を行って生きていれば、良いことがあるはずなのになぜ?と言う気持ちが、その演技からひしひしと伝わってきて、強烈過ぎて打たれました。

この映画自体かなり強烈で、進むにつれてどんどん変な方向に進み、やがては衝撃的な展開をしていくんだけど、映画祭での評判はあんまり良くなかったみたい。私にとっては相当心に残る良い作品で、ヘンテコな部分含めていつまでも語りたくなるような作品でした。でもそんな感じだから、日本で配給されるかどうかは謎。商業的な可能性はまったく感じない映画でしたが、どこかの会社が放映権だけでも買ってくれて、WOWOW辺りで放映してくれたらいいな、と心から思っています。