2018年3月2日金曜日

2日前の雑感

日本アカデミー賞授賞式の放映を見ながら悩みに悩み中。にしても、アメリカよりも組織票が効く日本の賞で、ド級インディー作品で主演女優賞獲った蒼井優、立派です。

で、本線。本当に何が獲るかいまだに全然わかりません。昨日シェイプオブウォーター見てきました。すっごい面白かったけど、やっぱりデルトロだよな、と。圧倒的にファンタジーやジャンル作品が認められないアカデミー賞で、この作品がもし作品賞を獲ったらこれこそ歴史を塗り替える快挙なんだけど、一方でこれが獲ったらアバターとかE.T.とかかわいそうって思うところがあります。なので私の結論としては、やっぱりシェイプには入れるのやめようと思っている今。ま、この結論は月曜日の朝まで揺れに揺れますが。

ちなみに昨日から今日にかけて決めたことが一つ。今年の最多受賞は作品賞を含め4部門と決めました。すなわちかなり割れる年の予想。シェイプが作品賞を獲るとなるとこれが崩れて6部門くらいになるんだろうけど、私の予想はシェイプが獲らない方にしようと思ってるので4部門です。ちなみにたぶんシェイプも4部門くらい獲る計算。ダンケルクも3部門は入れようと思ってる。そのほかにも、ブレードランナー、チャーチル、Coco辺りは2部門入れるような感じで、ちょっと数を散らそうと思っております。あくまでも今の時点の話だけどね。

泣いても笑っても月曜日にはジェーンさんのツイッターで発表しないといけない私の予想。これから二日間、悩みに悩んで頑張ります!!

2018年2月26日月曜日

90回目はかなり楽しい#3

どのエントリーも平均3人にしか読まれていなかったこのブログ、先ほどジェーン・スーさんが紹介してくれたら、1時間で300人くらいビジターが増えました。渾身のダニエル・デイ=ルイスについてのエントリーを読んで頂いた皆様、本当にありがとうございます。恐縮です。

そして先週末タマフルのアカデミー賞予想特集をお聞きくださった方々、ご拝聴有難うございました!大好きな話題についてしゃべり続けることができる、至福の1時間でした。

今回のアカデミー賞、作品賞の行方がすごいことになっているのは勿論のこと、個人的には「ファントムスレッド」の6部門ノミネートと、この作品が衣装賞を獲るかどうかというのが、ものすごい関心事です。そのほか、長編ドキュメンタリーが面白いレースになっていて、この部門の研究もこれから一週間の課題です。アニメーションにBreadwinnerやゴッホがノミネートされたことも快挙というべきで、受賞はCocoに確定しているとしても、あっぱれなノミネーションだったと思います。

なーんてことを先週のラジオで話すつもりだったんですけど、全然時間が足りませんでした。次回話す機会を頂けた暁には、かいつまんで要点のみ残さずしゃべれるよう、今から鍛錬を積みたいと思います。

2018年2月22日木曜日

90回目はかなり楽しい#2

90回目、本当に楽しい。こんなに楽しいオスカーは、私が見始めてから初めてかもしれない。なんせ、10日を残した今日、作品賞の行方が全く分からないのだから。

去年のベネチアで金獅子を獲って以来、フロントランナーと思われてきたShape of Water。一応いまでもフロントランナーには変わりないんだけど、なんかそう思えないのはなぜ?

それは、派手な前哨戦でほとんど勝利をしていないから。ゴールデングローブも英国アカデミー賞もスリービルボードにやられちゃって、なんだか勢いをなくしている感満載。これ、PGAとDGAを獲った作品にはまず感じられないことなのに、なぜこんなに不利な感じがするのだろう。

おそらくそれは、#Me Too #Time's Up 運動に代表される、社会的な背景があるのではないかな。今年の顔になる主演女優賞を受けるには、サリー・ホーキンスは印象が弱すぎる。まだ映画を見てないからよくわからないけど、サリーの役柄がスリービルボードの主役より強いわけがないような気がするのよね。その時点で、今年らしくない。

スリービルボードが作品賞を獲るには不利な点ももちろんあって、何よりも監督賞のノミネートをなぜかされなかったこと。私が見始めてからのオスカーでは、それでも作品賞を獲ったのは2本しかなくて、一つは最初の年89年度の「ドライビング・ミス・デイジー」。この年はビデオが擦り切れるほど見た授賞式で、なんといってもダニエル・デイ=ルイスが初受賞した年。同時にグローリーでデンゼルが初受賞した年。本当に素晴らしい授賞式でした。「ヘンリー5世」でケネス・ブラナーに初めてスポットが当たった年でもあったわ。そしてビリー・クリスタルが初司会の年。とにかく何から何まで素晴らしい授賞式で、その時に作品賞を獲ったのが、ブルース・ベレスフォードが完全に無視された「ドライビング・ミス・デイジー」だったわけです。でも、そのあとに監督がノミネートされなくて作品賞を受賞したのは「アルゴ」までなかったはず。「アルゴ」が比較的最近だったことを考えると、同じことが今年起こる確率ってどんなもんなんだろ。

「シェイプオブウォーター」は未見なので、作品に関することは何とも言えないけど、やっぱり女性の権利万歳の今年の風潮を見ると、どっちかというと「スリービルボード」に利があるように思えてならない。BAFTAの状況見ても、結局やっぱりまたみんな黒装束で現れて、ハーヴィ・ワインスタインに中指立てて終わるような授賞式になるのではないか、と思えてならないのです。

もう一つ加えて言うのなら、去年並みの最大のアプセットがあるとしたら、それは「ゲットアウト」の作品賞。これは万馬券が当たるよりもオッズが低い(高い?)と思うので、まず可能性はないと思うけど、フォックスの2本以外に獲る可能性があるとしたらこれしかない。これが獲ったらある意味、去年の「ムーンライト」よりもすごいと思う。ブラムハウス制作の娯楽ホラーだからね。めっちゃ面白かったけど。

いずれにしてもあと一週間。これが終わったらまた1年待つのかと思うとつらいけど、来週末は楽しみでしょうがない。

2018年1月24日水曜日

90回目はかなり楽しい

昨日のノミネーション発表は、近年まれにみる面白さだった。

なによりも、Phantom Thread!!!!!

ここまで組合の賞にことごとく無視されて、もはや主演男優賞すら危ないかもと思っていたところの6部門ノミネート。しかも監督は「スリービルボード」を押さえてのノミネートです。すごいすごすぎる。助演女優賞でレスリー・マンヴィルの名前が呼ばれたときに、もしや???と思ったものの、いやあほんとに来るとは思わなかった。まさかの監督賞。そして作品賞。一人で狂喜乱舞しましたよ。映画まだ見てないけどね。

今回は、生のダニエル・デイ=ルイスを見る最後のチャンスかも知れない本当に貴重な生放送です。もちろん会社は休みます。6部門ノミネートされた瞬間に決まったね。私は絶対休むよ。

昨日のノミネーションは、この個人的な満悦を除いても、本当に面白い結果になりました。一番大きいのは、監督賞が外れたことで作品賞のフロントランナーが何なのか、本当にわからなくなったこと。GGの結果やSAGの結果だけ見ると、「スリービルボード」が明らかに一歩リードだったけれど、監督賞にノミネートされずに作品賞を獲った作品は今までに本当に少ないのです。最近では「アルゴ」がそうだけど、その前になると「ドライビング・ミス・デイジー」まで私は思いつかない。ギレルモ・デル・トロの監督賞はかなり濃厚だと思われていて、13部門のぶっちぎり最多ノミネートやPGAの結果を考えると、どう考えても現時点では「シェイプオブウォーター」が頭一つリードする状態になっちゃったのよね。しかも、この二本は同じ配給会社なんですよ。一体どっち押すんだろ。こうなってくるとBAFTAの結果ががぜん意味を生んでくるわけで、珍しくBAFTAに注目です。実際の投票メンバーとかそういうことじゃなく、風を読む意味でBAFTAの結果はかなり重要になってくると思うので。私もこれから一か月、悩みに悩もうと思います。

そのほかにもいくつか興味深いノミネーションがあって、最初に興奮したのはMUDBOUNDの撮影賞。史上初の女性撮影監督ノミネートです。これは本当に良かったと思う。素晴らしいことです。この作品を編集した日本人、上綱麻子さんも喜んでいることでしょう。びっくりノミネートとしては、編集賞のI, Tonyaですね。リレハンメルを見てた世代ならだれもが覚えてる、トーニャ・ハーディングのナンシー・ケリガン殴打事件。加害者とされた彼女の半生を描く作品です。ハーディング、たぶんオスカーにも来るだろうな。彼女にとっても、ここでなんか救いがあってよかったよね。この作品はまだ見てないけど、脚本はとても面白かったです。早く見たい。それと、ケヴィン・スペイシーの代役でいきなり映画に出させられちゃったクリストファー・プラマーのノミネートも驚いたけど嬉しかった。88歳、堂々の最年長ノミニーです。いつまでも元気でいてほしい。Darkest Hour の健闘も結構びっくりしたけど、これでオールドマンは受賞しやすくなりましたね。そもそもする予定だけど。

というわけで、かなり楽しい今年のオスカー。主要な俳優部門は正直、SAGやGGと違う予想をするのが難しいけど、アプセットがあるとしたら主演女優か助演女優かなあ。オールドマンとロックウェルは固い気がする。今更ウィレム・デフォーはもう難しいと思うのよね。サリーはBAFTAで受賞の可能性はかなりあり得ると思うので、そこで受賞するとちょっと勢いづいてアプセットの可能性を感じるんだけど、なんか彼女、友達少なそうだし、マクドーマンドの人気を見ると、やっぱりマクドーマンドに行くのかしらね。つまんないけど。

いずれにしても、今までになく予想がつかない楽しい展開。これからの一か月、わくわくドキドキが止まりません。その先にあるのが、ダニエル・デイ=ルイスの最後の姿だと思うと、悲しくて立ち直れなくなりそうなので今はまだ考えないでおこう。

個人的にはレスリー・マンヴィルが興奮の頂点だった昨日のノミネーション、一番楽しい季節の到来です。今年もラジオでしゃべる予定。ちゃんと準備をしなくては。

2017年12月16日土曜日

引退の耐えられない重さ

ダニエル・デイ=ルイスが引退を発表して、何か月になるだろう。

彼は、私が高校一年生の時から思いを馳せてきた俳優である。そして、彼の存在は私にとって、アカデミー賞と密接な関係にある。

私が彼を知ったのは、中学三年生の時だった。おそらく先生に進められてみた「眺めのいい部屋」が最初の作品だったと思う。その頃彼は、「存在の耐えられない軽さ」という作品で日本において大ブレイクし、私の買っていた映画雑誌はこぞって彼を取り上げていた。まだ幼かった私はリバー・フェニックスに夢中で、正直彼のどこが良いのか全く分からなかったことを鮮明に覚えている。

1989年、私が高校に入学した年に彼は、「マイレフトフット」という映画に出演する。そして、1990年3月末に発表された第62回アカデミー賞で見事主演男優賞に輝く。くしくもそれは、私が初めて録画をして見たアカデミー賞授賞式だった。「ラスト・オブ・モヒカン」の撮影中(もしくは撮影準備中)だった彼は、肩まで髪を伸ばし、ほかの誰とも違うタキシードとボウタイで授賞式に現れた。Well, you just provided me with a hell of a night in Dublin...  そんな言葉で彼の受賞スピーチは始まった。そのはにかんだような美しさと、ちょっと鼻にかかった美しい英国アクセントの英語に、私は一瞬で虜になった。それ以来、どこで誰に聞かれても、私の好きな俳優はダニエル・デイ=ルイスになった。そして、それと同時に、俳優の銀幕とは全然違う表情を見せてくれるアカデミー賞に、夢中になった。

その後日本でも「マイレフトフット」は公開され、私も渋谷のシネマライズに足を運んだ。そこにいた彼は、授賞式の華やかなハンサムな男性とは全然違う、髭もじゃの気難しい大人の男性だった。私は初めて、彼の演技のすごさを目の当たりにし、その後VHSでマイ・ビューティフル・ランドレットを見た。この映画の中にもまた、全然違う彼がいた。

アカデミー賞を受賞した後の彼は、続けざまに有名監督の作品に出た。マイケル・マン監督の「ラスト・オブ・モヒカン」は、私にはちょっと商業的に思えてあまり気に入らなかったが、再びジム・シェリダンと組んだ「父の祈りを」はどの角度から見ても非の打ちどころがない名作で、私はこの年ふたたび彼がオスカーを手にするのではないかと期待した。結果、この年1993年度は「フィラデルフィア」でトム・ハンクスが初受賞することになったのだが、私はいまだにこの年のオスカーが一番甲乙つけがたいレースだったと思っている。この年はまれにみる豊作の年で、作品賞も本当に粒ぞろいだった。(受賞したのはシンドラーのリスト)

この頃から私は、ダニエル・デイ=ルイスはそのうち、歴史上一番たくさんオスカーを手にする俳優になるに違いないと思うようになっていった。ほかの誰と比べても、彼ほど優れた俳優がいるとは思えなかったからだ。彼はどんな役をやっても説得力があり、それは毎回全然違うタイプの役柄だった。私は彼の新作が出るたびに劇場に並び、オスカーのノミネーションを待った。

しかし、90年代後半のそんなある日、彼は突然銀幕から姿を消す。なんでもイタリアに行って靴職人になるというのだ。彼の最後の作品は、「マイレフトフット」「父の祈りを」で組んだジム・シェリダンのアイルランド三部作完結編「ボクサー」だった。この作品でも彼は本当のボクサーと同じトレーニングをし、減量をし、役になりきったが、残念ながら作品自体がそこまで秀作ではなかった。

この最後の作品で彼はアカデミー賞にノミネートされず、私は彼を再び銀幕で見ることをあきらめた。その頃には私は映画業界に足を踏み入れており、仕事での目標を「ダニエル・デイ=ルイスに会うこと」と言ってはばからなかったが、その夢はもはや夢で終わるかに見えた。しかし、1999年、彼はマーティン・スコセッシの説得により、銀幕に復帰を決意する。「ギャング・オブ・ニューヨーク」の悪役、ビル・ザ・ブッチャーを演じたのだ。

ギャングの撮影は1999年に始まり、2001年のはじめに終わった。ローマのチネチッタで行われたこの撮影は、予定していた撮影期間を大幅に遅れ、製作費も膨れ上がったと聞いている。公開は2001年末に予定されていたが、2001年9月にアルカイダによるテロが実行され、この作品の最後にこのワールドトレードセンターの映像が含まれていたことや、ニューヨークが舞台の暴力的な作品ということが理由で、公開は翌年に延期された。もしこの作品が2001年に公開されていたら、アカデミー賞の結果はどうなっていただろう。「ビューティフル・マインド」は作品賞に輝いただろうか。今となっては考えても仕方のないことだが、このビル・ザ・ブッチャーの役でDDLは、主演男優賞にノミネートされる。あまりの圧倒的な存在感に、明らかにわき役(=敵役)の彼の方が、主役のディカプリオよりも脈があるだろうと踏んだミラマックス(=今話題のハーヴェィ・ワインスタイン)が判断した結果だった。2002年度、第75回のアカデミー賞の主演男優賞は、結果的に最年少受賞のエイドリアン・ブロディに行く。前年の主演男優賞(デンゼル・ワシントン)が悪役での受賞だったので、2年連続で悪役が獲るのは良しとされなかったとか、そもそもわき役なのに主演男優賞にノミネートされたのが間違いだとか、DDLが受賞しなかったわけはいろいろささやかれたが、いずれにしてもあの年の演技として、彼のビル・ザ・ブッチャーが皆の脳裏に焼き付くような、印象的なものだったことは誰も否定できないだろう。

その後彼は俳優業に一応復帰し、出演作を注意深く選びながら今まで来た。そして「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」「リンカーン」の2本で再びアカデミー賞主演男優賞に輝いている。アカデミー賞の主演男優賞を3回獲っている俳優は前代未聞で、彼はすでに記録を作っているわけだが、私は彼がキャサリン・ヘップバーンの記録(受賞4回)をいずれは抜いて、今後誰にも抜かれない記録を作る(5回受賞)と思って疑わなかった。そして、彼がポール・トーマス・アンダーソンの新作に主演するという情報を得た去年、これはほぼ確信に変わった。主演男優賞4回目の受賞は記念すべき第90回アカデミー賞で決まりだ!

Phantom Thread をまだ見ることができていない私は、この作品がどのくらい出来が良く、一般受けする内容かを知らない。しかし聞こえてくる評価はそこまで芳しくない。アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされるのはたったの5人。天下のDDLをもってしても、評判の良くない作品でノミネートされるほど簡単ではない。私は今月ずっと、祈るような思いで前哨戦を見てきたが、一番大事なSAG(俳優協会)賞のノミネートを逃した時には絶望的な気持ちになった。DDLが役者生命最後の作品で、アカデミー賞にノミネートされないかもしれないのだ。

ダニエル・デイ=ルイスの引退が、私にとって耐えられないのは、私が彼の大ファンであるからというだけでなく、彼の存在が私のライフワークであるアカデミー賞と密接に関わっているからだ。私は、彼がきっかけでアカデミー賞にはまった。彼に会いたい、アカデミー賞に出席したい、が目標で、映画業界に入った。私にとって彼の演技は誰よりも素晴らしいものであり、彼は演技をするたびにノミネートされるものだと信じてきた。彼が新作に出るということは再び大好きなアカデミー賞で彼の姿を見られることを意味し、今年もそれだけを楽しみに今までやってきたのだ。だから、撮影の真っただ中に突然発表された彼の引退は、大げさに言えば私の人生そのものがいったんここでストップするような感覚で、これからの指針をなくしたような気になるのだ。

私の今の最大の恐怖は、彼が今年のオスカーにノミネートされないこと、つまり最後のチャンスである3月4日のアカデミー賞で、彼の姿を目撃できないことである。大好きなライフワークであるアカデミー賞だが、今回彼がノミネートをされなかったら、来年からのオスカーを同じ気持ちで見ることができるだろうか。私にとってダニエル・デイ=ルイスは、オスカーそのものであり、私の映画人生なのである。

2017年9月18日月曜日

トロント映画祭観客賞の結果について思ったこと

今年もオスカーの季節が近づいて参りました。例によって、最初のゴングを鳴らすのは秋の一連の映画祭。ヴェネツィアから始まり、テルライド、トロントと続く流れの中で、この秋の注目作が浮上してくるのですが、今年はちょっと異質で読めない。

毎年だいたいトロント映画祭には参加するのですが、今年はお休みしてヴェネツィアのみ、行ってまいりました。様々な弊害により、見たい映画を見られず、去年とは打って変わって不作のヴェネツィア。なんだかなあと思う中で金獅子に輝いたのは、一番見たくて見られなかったギレルモ・デル・トロのShape of Water。サリー・ホーキンスがすごい演技をしていると話題で、それだけでも確認したかったのですが、実際映画もとても良いらしい。これは東京国際映画祭でも上映されるので、そこで見逃さないようにしないとです。

で、こちらのShape of Water がオスカーにおける重要なポジションにいち早く乗ったことは間違いがないのですが、トロントでも評判が良かったようなので、私はこれが観客賞を獲るものと思っておりました。が、結果的に受賞したのは全然違うエンターテインメント映画 Three Billboards Outside Ebbing, Missouri。 正直ものすごく意外な結果でした。

こちらの作品、ヴェネツィアでも上映され、コンペ部門で脚本賞を獲りました。私もこれは見てきたのですが、なんというか、ポリティカリーインコレクトぎりぎりの(というかどう考えてもインコレクト)なセリフもたくさんあったり、主人公の行動や人間性が全然善人じゃなかったり、もちろんこれは問題提起の意味で誇張されている部分が大きいのですが、なんとも言えない気持ちになる映画で。今までに観客賞を獲ってきた「スラムドッグミリオネア」「英国王のスピーチ」なんかと比べると、まあまっすぐ飛んでこないツーシームみたいな作品なんです。今までに見たことのないぶっ飛んだ内容と、演技派揃いのキャスティングで、相当面白いことは間違いないけど。トロントの観客賞と言えば、オスカーでどれだけ本線に残るかのポジショニングを固める意味で非常に重要な位置づけとみなされている昨今、今年の結果は本当に意外で、先が読めなくなりました。しかも次点がポップでスキャンダラスな I, Tonya。こちらは、リレハンメルオリンピック直前のナンシー・ケリガン殴打事件で有名になったトーニャ・ハーディングの人生を、彼女の視点から描いた作品で、直球勝負の感動ものからは程遠い(はず)。これまたあの頃フィギュアスケートに夢中だった年代の私にはドンピシャな作品なのですが、ジャンル的にもトロントで次点になるというのは想定外でした。ま、I, Tonya については未見なので、もしかしたらすごく感動する作品になってるかもしれないけどね。マーゴ・ロビーはかなりの力演らしい。いずれにしても、この2作品がトップ2に輝いたのは本当に想定外で、個人的にこの辺かしらと思っていた、サンダンスで絶賛されたMudbound 辺りが獲るよりは、ずっと面白い結果だったかな、と思います。

これらの作品は今後続々と全米公開されていくわけで、その状況を見守らないとまだまだなんとも言えないわけですが、とりあえず幕開けは波乱で始まった印象の今年の映画祭シーズン。フランシス・マクドーマンドもサリー・ホーキンスもスタジオの強力プッシュがあるだろうことは織り込み済みだけど、混戦と言われる今年の主演女優賞、あとはどなたが食い込んでくるのでしょうか。

2016年8月1日月曜日

乙女心をくすぐる秀作ブルックリン

昨日友人のジェーン・スーのトークイベントに顔を出した際に、このブログの放置っぷりに対して叱責をされ、もう2年くらい書いてないなと思ってログインしてみたら、今年の5月に一回書いてるじゃん!本当に微塵も覚えてないことを鑑みると、酔っぱらって書いたのだと思います。反省。でも、Paterson は今年見た作品の中で暫定一位なので、とりあえず書いておいて良かった。アメリカは年末公開決定したそうです。アダム・ドライバーがノミネートされるかどうかは対抗馬がどうなるかのみにかかっておりますが、アダム・ドライバーは今年スコセッシの「沈黙」もあるし、もしかしたらもしかしちゃうんじゃないの?と密かに期待を寄せております。アダム、頑張れ!

さて、Paterson に続いて、今年は心から好きと思える作品がもう一本。今年のオスカー作品賞にノミネートされていた小品、「ブルックリン」です。シアーシャ・ローナンが素晴らしい。「つぐない」の時以来の名演です。彼女はいつかオスカー獲るだろうなあ。30代くらいかしら。

話の内容は、単純なのです。アイルランドでくすぶっている不遇な女の子が、羽ばたくために新天地アメリカに行くけど、そこには家族も友達もいなくて、寂しくて辛くて泣いてしまうような生活を送っている。でも素敵な男の子に出会って、自分の場所を見つけて幸せになってきたなと思ったら、今度は故郷の訃報でアイルランドに戻ることになる。そこには昔とはまた違う世界が待っていて、どちらの故郷を選ぶべきか、揺れる若い女の子の話。なんだかね~、自分とはひとつも共通点ないんだけど、気持ちがわかっちゃうタイプの作品なのよ。それはひとえにこのシアーシャ・ローナンの名演のおかげなんだろうけど。いや~、久々に胸が苦しくなるような素敵な映画を見ることができました。

ジム・ブロードベントにジュリー・ウォルターズと、往年の名優もさることながら、今回この作品でいい味を出しているのが、今売れに売れているドーナル・グリーソン。今年はエクス・マキナという名作も公開され、レヴェナントやスターウォーズと、最近の話題作で出てないものはないんじゃないかと思うくらいの若手有望株。お父さんであるブレンダン・グリーソンよりも若干いい男風なのがまた追い風なんでしょう。彼もオスカー俳優になる可能性が高いので、今後も要注目です。

昨日のウルフの訃報がショック過ぎて、ブルックリンのこと書いてる場合じゃないなと思いつつ、やはり思ったことは早めに書き留めておかないと忘れてしまうので、とりあえず書きました。今週末はいよいよオリンピック開催。フェルナンド・メイレレスが総合演出です。ブラジル人として一番オスカーに近い存在のメイレレス。私はウォルター・サレスよりもメイレレス派です。開会式に期待しましょう。