2019年4月27日土曜日

ブラッククランズマンをようやく見ました

ツイッターを開設してからの3ヵ月、毎日のアップデートにばかり追われてブログを全く更新しておりませんでした。すみません。

昨日1ヵ月ぶりに劇場に行きました。ずっと見たかった「ブラッククランズマン」。やっと見ることができました。まず思ったのは、さすがスパイク・リー、面白いなと言うこと。スパイクの映画は面白くなかったことがほとんどない。私は基本的に好きです。そして相変わらず、説教臭いなと言うこと。ブラックシネマを引っ張ってきたパイオニアだから当然のことなんだけど、今回の作品はその、アメリカにはびこる差別意識について云々っていう説教臭さの他に、NYUのフィルムスクールで教鞭をとるようになった教育者としての説教臭さを感じられて。それはたぶん、作品がいきなり「風と共に去りぬ」のワンシーンで始まり、途中には「国民の創生」のカットがたっぷりと流されたところに起因してるのだと思います。

大学生の頃、社会学を専攻していた私は、アメリカの大学で「女性とメディア」「映画における偏見」と言う二つの女性学のクラスを取りました。女性学は社会にはびこる差別や偏見について学ぶ学問で、この二つのクラスでは、メディア全般や映画が社会における差別や偏見にどのように影響しているかを学びました。で、そのクラスでそれぞれ取り上げられたのが、「風と共に去りぬ」であり、「国民の創生」だったのです。「風と共に去りぬ」に出てくるマミーは、「安全な黒人」「良い黒人」の代表的なステレオタイプで、この作品はその社会的思想を定着させたと言うことで、かつての大名作も今や社会的観点から問題作として取り上げられるものなのだ、と私はこの授業で初めて知りました。「国民の創生」はさらにその上を行くもので、メインのストーリーはKKKの誕生を祝う内容です。映画の父と呼ばれたDWグリフィスが映画の創成期に作ったアメリカ初の長編映画である上に、さまざまな手法を用いた高い完成度で、長い間「傑作」「手本」と尊敬されて来ました。この2本はつまり、アメリカ社会の差別や偏見と映画を考えた時に最初に出てくる代表作であり、スパイクはわざわざその分かり易い2本を自分の映画の中で紹介したのです。

久々に「国民の創生」のフッテージをふんだんに見せられて、ふと私は数年前に作られたもう一つの「国民の創生」について思い出しました。ネイト・パーカーと言う黒人監督兼俳優が奴隷解放について描いたTHE BIRTH OF A NATIONです。2016年のサンダンス映画祭でお披露目され、ものすごい話題になりました。観客賞を取り、この年のオスカーに絡んでくる間違いのない1本と言われ、史上最高の高値で配給権が買われました。「国民の創生」の原題と全く同じタイトルがつけられたこの作品には、アメリカ社会の黒人差別への批判がこめられ、ネイト・パーカーという無名の俳優は、一躍時の人になりかけたのです。が、映画が公開され話題になった直後、この人が大学時代に女性をレイプし、その女性はその後自殺してしまったことが明るみに出ます。そしてこの作品はアカデミー賞には全くスルーされ、その後の彼のキャリアはほとんど日の目を見ず、今日に至るわけです。

マイノリティとして搾取され、差別されることの不条理と辛さを痛いほどにわかっているはずの彼でも、性の上では力を持つ者の立場しかわからない。この事件で私は、社会における差別構造の複雑さを痛感しました。白人男性がピラミッドの頂点なら、有色人種の女性は、底辺です。先月引退したイチロー選手が、「アメリカに行って初めて、弱いものの気持ちが分かるようになった。だから若者にもぜひ海外に行ってほしい」というようなことを言ってましたが、これはおそらく、海外で暮らしたことのある日本人は誰でも思うところでしょう。日本にいる限りは自分は主流で、外国人の不安や不便や無力感は感じることができません。人間の想像力なんてたかが知れてるものだから、知識として差別や偏見の苦悩について学んでも、自分がその立場に立ってみなければ、なかなか自分事として感じ取ることはできないものです。だから私たちは、知ったつもりにならないで、常に相手の話に耳を傾け考えることが本当に必要なんだと思います。

普通に楽しむだけでなく、見た後にいろいろと考えてしまうブラッククランズマン。さすがスパイク、見てよかったと心から思った一日でした。

1 件のコメント:

  1. とにかく熱いものを感じた映画でした。
    ただ、メラニーさんも言うように、まだ海外に出たこともない27歳の私には本当の意味ではこの映画を理解できていない。しかしそれでもなにか熱いものを感じた意味を考えていきたいです。

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